原作は【松本清張】氏の長編小説で、同氏の作品の中でも著名なひとつでもある。
1974年に映画化されたのが本作品で、映画化に先立ち1962年にTVドラマ化されているが、些か観劣りがしてしまう。
それ以後も、5回TVドラマとして製作されているが、正直言って別の作品だと思える内容である。
例えば、原作の確信ともなっている【本浦千代吉の疾病】が、1977年版では【精神疾患】となっていたり、1991年版では、あろうことか【逃亡犯】なのだ。
それ以外のTVドラマでも、似たり寄ったりなご都合主義の設定となっている。
この原作の主題は【宿命】である。それには、当時の社会に蔓延する【ハンセン氏病】に対する無理解が根底にあってこそ、物語自体が成り立つのであろう。
それは、かねがね私が、原作と映画化された作品との違和感に辟易してきた部分でもあるのだ。
しかし、本作品に限っては、原作の核心部分を土台にして丁寧に制作されている。
近年の邦画を好まなくなってしまった私だが、この年代の作品群は大好きで、幾度となく観返している。
やはり、名作と言われる作品には、それなりの理由があるのだ。
店も営業自粛中でもあるし、しばらくは、邦画三昧になる予感がしてきた。
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