Miles Davis(tp) / George Coleman(ts) / Herbie Hancock(p) / Ron Carter(b) / Tony Williams(ds)
Feb.1964 CBS SONY
久しぶりに、二枚のアルバムを聴いている。
営業時間中には回すことがないアルバムである。
タイトルからすると、別々のアルバムのように思えるが、リンカーン・センター・フィルハーモニック・ホールでのコンサートを二分割した双子のライブ・アルバムだ。
【My Funny Valentine】でのマイルスは、フルーゲル・ホーンを思わせるトーンを響かせているし【Four&More】では一転して、鋭く抉られるかのように直線的な音を聴かせてくれる。
このあたりが、二枚組みのアルバムとして発売されなかった理由かもしれない。
しかし、研ぎ澄まされた緊張感が漲っている点は、どちらにも共通している。
日ごろ耳にしている年代のハード・バップとは違った鋭さで揺さぶってくるのだ。
この手のアルバムを、のんびり飲むときに聴こうとすれば、それなりの緊張を強いられてしまう。
ましてや、ジャズを聴きなれない人には、耳障りに感じることだろう。
それが、リクエストの無い限り、店の営業時間中には回さない理由でもある。
閑話休題。
『マスターはマイルスが嫌いなの?』と訊かれたことがある。
いやいや、決して嫌いな訳ではない。
その証拠に、数えてみれば彼のアルバムが一番多かったし、何を隠そう、2・3度しか回したことがない【BITCES BREW】まで持っているのだ。
しかし、営業時間中は、ジョン・コルトレーンが在籍していた当時のアルバムを回すのみである。
それは、何よりもこの年代のジョン・コルトレーンが好きなこともあるし、私のマイルス・デイビス感からきているところが大きい。
矛盾を覚悟でいえば、私のそれは【Kind of Blue】の前後から【MILES SMILES】あたりまでで完結してしまう。
この頃だけに感じる揺さぶられるような緊張感が心地いいからだ。
かといって、この二枚のアルバムが【The Complete Concert 1964】としてCDでも発売されていると知らされても、この緊張感をCDの長さだけ持続することは、私には辛い。
やはり、LPの片面、長くても20分前後が丁度いい長さに感じる。
片面が終わり、裏面もしくは新しいアルバムをかけ替えるときの間が何ともいいのだ。
それまでの緊張が緩み、次の緊張への準備ができる。
私が『ジャズを聴くにはLPレコードがいい』と思っている所以でもある。
私には心地いい緊張感だとしても、それを同じように感じる人は決して多くないだろう。
ましてや、心地よく飲める類の音ではないと思う。
やっぱり、照明を落とした店で、音量を少しだけ大きくして、今夜の〆の一杯を注ぎながら、独りで聴くのが、私の性にあっているのだ。
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