SMITHVILLE

Louis Smith(tp) / Charlie Rouse(ts) / Sonny Clark(p) / Paul Chambers(b) / Art Taylor(ds)
Mar. 1958. BLUE NOTE

音質がどうのとか、やっぱりアナログでなくちゃなどと言う前に、LP盤で聴きたくなるアルバムはあるものだ。

私にとって、このルイ・スミスの【Smithville】も、そんな1枚である。

それは、若いころに通いつめた店で飽きるほど聴いたことへの、安っぽいノスタルジーかも知れない。

そうだとしても、ルイ・スミスのトランペットの音は、あのころのままで、やっぱり最高にイカシている。

好きなアルバムなのだから、そりゃ当たりまえだ、などと無粋は言うなかれ。

奥深い部分にしまいこんで忘れていた思いが甦る心地よさは、実際に味わってみなければ理解できないだろう。

店を閉めて独りになったとき、このアルバムに慎重に針を落とすと、行きつけの店のマスターにお願いして特別に両面を聴かせてもらっていたあの頃が浮かんでくる。

因みに、彼は２枚のアルバムをブルー・ノートに残して引退してしまったトランペッターである。

正確に言えば、もう1枚の【Here Comes Louis smith】は、マイナー・レーベルで発売できなかったマスター・テープをBule Noteが買い取って発売したアルバムとのことである。

クリフォード・ブラウン直系の中では、自分色に染めすぎるリー・モーガンや、エッセンスだけを振り掛けるドナルド・バードよりも、最も彼を感じられるトランペッターだと思っている。

このアルバムでも【Embraceable You】でのバラード演奏は、何度聴いても心に響いてくる。

この曲は、クリフォード・ブラウンも【With Strings】の中で演奏しているが、この曲に関して言えば、私はこちらの方が気に入っている。

1970年代に入りカンバックしたCDを手に入れてみたが、普通のトランぺッターになっていた。

そのことが、余計に淋しく感じられてしまう。

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