三毛猫の遺伝学

ローラ・グ-ルド(著) 七戸和博・清水眞澄(監修) 古川奈々子(訳)
1996年 翔泳社

三毛猫は雌ばかりなのをご存知だろうか?

しかし、まれに雄の三毛猫が出現するのであるが、悲しいかな、彼には生殖機能が備わっていないのである。

つまり、乱暴に言ってしまえば、オカマもしくはニュー・ハーフの類に近い存在なのだ。

著者と雄の三毛猫【ジョージ】との出会いは、ガレージを野ネズミに荒らされたことから始まる。

専門は言語学である著者が、ふとしたきっかけから生命の不思議さと出会い、畑違いの生物学、遺伝学等を駆使しながら、その謎を解き明かしていく過程が書かれている。

私と言えば、愛猫家は言うに及ばず、ペットに関しては嫌悪感しか抱いたことがない。

そんな私が、愛猫の成長記録とも読める本書を最後まで読み通せたのは、溺愛することでしかペットと接することができない人々とは、まったく違った距離感を感じたからだ。

遠い昔の論文をひもとくと、知識というものがあっというまに古びて、使いものにならなくなることを痛感させられる。現在の学者たちの努力を次の世代の人たちがげらげら笑う日がいつかはくるんだろうな、と思わずにはいられない。

序文で語られる著者のこの言葉から、その思いが感じられる。

内容的には、やさしく噛み砕いた理論で説明されているので、門外漢の私ですら理解できた。

お陰で、三毛猫を見かける度に『やっぱり雌かな?ひょっとしてニューハーフかな?』と思い描いてしまうようになってしまった。

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