ほんのときたまであるが、相方は名(迷)言を吐く。
日頃の会話では『〇〇と▽▽は、瓜ふたつね』と言っておいて『あれ?瓜ってふたつでよかった?ひとつだった?』などと、私を楽しませてくれる。
そんな相方だが、時として冴え渡る瞬間がある。
そんなときに彼女の口から吐き出される言葉は、反論する気力さえも、鋭利な刃物のように、抉り取ってしまう。
それは、かなりの荒療治だと思えなくもないが、それに助けられてきたことは、紛れもない事実なのだ。
ずっと以前に『走るように暮らす男と、歩くように暮らす女』の物語を書き始めたことがある。
しかし、あまりにも自分に似ているようで、半分も進まないうちにやめてしまった。
フィクションを書いていると思っていたのに、それが現実だと気付いてしまったのだ。
そんなときほど味気ないものはない。
プロ作家でもあるまいし、自分の身の回りのことなら、取り立てて物語として書く必要もないことに気づいてしまったのである。
確かに、私の生き方は、走るようにせっかちだった。
特にここ数年は、私の身の回りに起きた出来事が、それに拍車をかけてきたようにも思う。
当然、心にゆとりも無くなる。
言葉にも刺が出る。
振り返れば、店を始めて半年過ぎたころにも、そんな状態が続いていたことがあった。
そのとき、相方がいみじくも投げつけてきて、私の目を開かせてくれた言葉がこれである。
【Haruさんは、心が自転車操業】
まさしく【名言】である。
相方の口から名言が出たときは、私にとっての正念場なのかも知れない。
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