林 晴生(著) 1980年 グロビュー社
小学生が引き起こした5件の殺人事件を題材に、家庭及び社会環境を著者なりに分析したノン・フィクションである。
初版年でもわかるように、ふた昔以上も前の本であるが、その内容は現代の事件といっても通用するもので、言いかえれば、子供たちを取り巻く荒廃した環境は、すでにこの年代から始めっていたともいえる。
いみじくも、著者は、序章で「マッチと火事」の関係になぞらえて、社会に対して問題を提起している。
しかし、今の世が、それを払拭できているとは到底思えないし、そのことが、一番怖ろしいと実感するべきなのだ。
マッチを取り上げたところで、次々とそれに代る点火道具が生み出される社会では、仮に火を点けたとしても大事に至らない配慮、燃えやすい状況をつくらないことの重要性を、考えなければいけない。
目先の危険性だけを取り上げても、問題は解決されないのだ。あらためて考えさせられた一冊である。
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