Traneing in

John Coltrane(ts)//Red Garland(p)//Paul Chambers(b)//Arthur Taylor(ds) Aug. 1957 PRESTIGE

誰にでも、心に秘めた自分だけの名盤があるものだ。

何がいいのか訊ねられても、明確な答えが見つからない。

巷で売れた訳でもない。間違っても、名盤案内などには登場しない。

それでも、聴いていると何とも心地よくなる。

私の中で、そんな一枚がこのアルバムなのだ。

60年代に入り【John Coltrane】は、あまりにも偉大になってしまった。

そのせいか、この年代での彼の評価は芳しくない。

彼の代名詞ともなった、隙間無く音を敷き詰めていく【シーツ・オブ・サウンド】を確立するのは数年後であるし、麻薬への誘惑も、まだ断ち切られていない時代でもあった。

このアルバムに話を戻せば、絶頂期にあったレッド・ガーランド・トリオと競演したワン・ホーン・アルバムである。

レッド・ガーランドと聞けば、私の中では、真っ先にブルースが思い浮かんでしまう。

ここでも、アルバム・タイトルでもある、コルトレーン作曲のミディアム・テンポのブルースから始まる。

同年に録音された【Soul Junction】での、コテコテのスロー・ブルースもいいが、この曲でもコルトレーン節を堪能できる。

アルバム全体でいえば、ブルースあり、バラードあり、典型的なハード・バップありと、お得で楽しめる内容だ。

振り返ってみると、マイルス・デイビス・クインテットに在籍していた56年当時の演奏を聴き、彼が好きになった。

パワーとエネルギーに満ちた演奏に感じたのである。

しかし、今にして思えば、その時点で、コルトレーンに残されていた時間は10年しかなかったのだ。

ブルー・ノートで吹きこんだ数少ないアルバムの【BLUE TRAIN】、プレステージでの初リーダー・アルバム【COLTRNE】、一番のお気に入りである【LUSHLIFE】は、すべて57年の吹き込みだ。

セロニアス・モンクとの名演が残っているのもこの年代である。

やはり、この年代のコルトレーンが、私の性に合っているようだ。

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