辺見 庸 (著)1994年 共同通信社
自らの舌と胃袋のありようが気にくわなくなり、ぎりぎりといじめてみるために、著者はこの旅に出た。
時には残飯を食らい、バター・コーヒーでのたうちながら、食べる営みを通じて見え隠れする現実を書き残している。
初版された90年代前半と現在とでは社会情勢そのものが違うため、現代に当てはめるにはそぐわない部分もあるが、基本的な点は何ら変わっていない。
食欲とは、人の持つ欲望の中でも本能が占める割合が多い厄介な代物なのである。
そして作者は、この国の食文化を危惧しながら
食うことをめぐるこの国の過去と未来の姿は、これまで私が旅路に見てきた食の原風景とあながち無縁ではないようにも思われる。
と、あとがきに結んでいる。
飽食のつけにやってくる飢餓の日を、あらためて心に刻むためにも、読んでおきたい一冊である。
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