
松本清張(著) 昭和36年 中央公論社
著者が推理小説に及ぼした影響は非常に大きなものがある。
謎解きとトリックに終始するあまり、行詰まりをみせていた推理小説に、動機という人間の心理と社会性を中心にすえることにより、まったく新たな流れを生み出した源流といえる。
その著者が、自身の作品を遡上にのせながら
- 推理小説の魅力
- 推理小説の発想
- 現代の犯罪
- 二つの推理
- 推理小説の周辺
の、五章からなる構成で推理小説の作法を解説した随筆集が本書である。
中でも、1949年に起きた国鉄三大ミステリーのひとつでもある 『下山事件』 と、1959年の 『BOAC(現・ブリティッシュ・エアウェイズ)スチュワーデス殺人事件』 を取り上げ、独自の視点から考察している 『二つの推理』 の章が読み応えがあった。
時代的にみて、現代にそのまま当てはめるのには、些かそぐわない部分も多いが、今もって私のバイブルとなっている、大切な一冊である。
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