真実を知ってしまったために、真実が壊れてゆく。知らないからこその真実なのである。真実とは、かくも厄介なものなのだ。
日本には【胸三寸に畳む】という慣用句がある。
円満に事を運ぶためには欠かせない習慣だと思う。
言って良いことと悪いことの区別がつかないのなら、言わないほうが良い。
例え、それが真実だとしても、一旦、言葉にしてしまえば、後戻りはできないのだ。
その覚悟がなければ、口に出すべきではない。
黙って【胸三寸に畳み】墓場まで持っていくに限る。
何でも言い合える仲とおっしゃる方々を観察させていただくと、押し並べて、どちらかが【胸三寸に畳む】達人のように思われ、感心させられる。
私も常々、心に留め置いているのだが、困ったことに、酔った勢いで口走ってしまう。
まだまだ修行が足りないと、反省しきりの日々である。
閑話休題。
ケイト・ウィンスレットという女優さん。どこかで観たと思ったら【愛を読むひと】の主演女優だった。
【タイタニック】の方が有名らしいが、この手の作品は観ないので知らなかった。
当作品での役柄も、10人中9人は嫌いな性格だと思うに違いない女性を、大胆に演じているのが印象的だった。
またひとり、好きな女優さんとめぐり逢えたのは嬉しい。
印象的といえば、最後の場面が秀逸である。
奥方のおしゃべりを聞いている振りをしながら、補聴器のボリュームを絞ってしまう老人。
無音の中に映し出される彼の表情が、この作品のすべてを語っているように感じられた。
コメント