茨城のりこ(著) 花神社 1977年
昔から、手持ちの詩集は少なく、目を通すことも滅多にない。私の貧弱な感性では、理解できない部分が多いからだ。それでも、数冊は好きな詩集がある。その、数少ない中の一冊がこの作品である。
戦後に活躍された著者は、詩人にして童話作家、エッセイスト、脚本家と、多彩な分野で作品を残されている。代表作ともなっている【わたしが一番きれいだったとき】は、多くの教科書にも掲載されたと聞くが、悲しいかな、学ばなければいけない時代に、それから背を向けてきた私には知る由もないことだ。
その上、中学生になりギターを弾き始めたころ、懸命になって覚えたピート・シーガーの【When I Was Most Beautiful】は、この詩の英訳だったことも、今になって知ったほどの体たらくである。
閑話休題。
著者の詩からは、女性が持つしなやかな視点が感じられる。しかし、私が引き寄せられるのは、女性らしい『潔さ』なのだ。
それを、価値観が間逆になってしまった戦後を生き抜いてこられた中で身につけられたのか。はたまた、それよりもずっと以前から備わっていたものなのか。
そのあたりを推し量る術を持ち合わせてさえいれば、もっと深く著者の作品を読み解くことができるのだろうが、重ね重ね、学びの時代を呆けてしまったことが悔やまれてしかたない。
====== 以下、引用 ======
「自分の感受性くらい」
茨城のりこ
ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を 時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ ばかものよ
====== 引用、終わり ======
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