香り(かほり)

香水

私は身なり関してまったく無頓着な部類に入る。

コーディネイトなどにはお構いなしで、暑けりゃ脱ぐ、寒けりゃ着るで通してきた。

その昔、アパレル業界、それも高級婦人服の販売に8年ほど身を置いた経験など微塵も身についていない。

でも相方は違う。

何たって、色も素材も同じTシャツを、袖丈の違いだけで数種類を揃えるくらいなのだ。

そんな彼女が私の身なりを黙って見逃してくれる筈が無い。

二人で出かけるときは、当然の如く、きっちりとチェックが入り、私がチョイスした身なりは、かなり高い確率(ほぼ100%に近い)で、着替えることになる。

そしていつも感心するのは、その組み合わせがさまになっているところなのだ。

その点だけは、何とも心強い。

しかしながら、身なりには無頓着な私でも、香りには気を使ってきた。

私にとっての香りは、人との距離を判断する基準になっているからである。

例えば『お付き合いしている女性の香りが鼻についてきたら別れ時かな』などと、身勝手な判断基準を設けてきた。

今振り返ってみても、その基準はあながち外れていないと思う。

だからこそ、相手に不快な思いをかけないように、私自身が気を配るのは当然なのだ。

幸いかな、相方は私の首筋に鼻をつけてクンクン臭いを嗅ぐのがお気に入りらしい。

私としては、彼女がいつまでもそう思ってくれるよう願いつつ、香りには気を配り続けねばと心に念じてきた。

ところが、私が長年愛用してきた香りが、年々、手に入りずらくなっているのである。

ここ数年はネットでしかお目にかかれない。

このメーカー、新製品は容易に手に入るくせに、最も古いタイプ、つまりは一番ベーシックな香りが品切れする。

香水ショップで商品名を言っても知らないケースが多いので、売れ過ぎが原因ではないだろう。

頻度としては、日に1回、ふた吹きする程度なので、この100mlボトルで一年以上はもつのだが、これまで回を追うごとに手に入れにくくなってきているのが悩みの種である。

探し回る度に『そろそろ生産中止かな?』などといぶかしがりつつも、ふた昔以上も前から使っていることを考えれば、到底、諦めきれる範疇ではない。

だからと言って、数本まとめ買いするような無粋は、私にとって大切な香りだからこそ、できない相談なのである。

いやはや、香りとは厄介なものだ。

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