無理

奥田英朗 (著) 2009年 文藝春秋

はっきり言って夢も希望もない物語である。

5人の群像物語という形で展開され、それが最後に結び合わされるのだが、そこの部分だけが必然性に欠けるようで消化が悪かった。

その点からすれば、2002年に上梓された【最悪】の方が、無縁だった3人の人生が違和感なく交差しているためか、抵抗なく読めた。

数多い著者の作品の中でも、読後感の点からすれば、間違っても良いとは言えない。

しかし、大上段に振りかぶった主題(テーマ)の上に書くのではなく、多くの人がうちに秘めている邪悪な部分を描ききることで読者に問いかけてくるような、この手の作品群が手放せない理由である。

コメント