小池真理子(著)角川書店 平成24年
心理学を専攻する大学院修士課程の主人公が、ソフィ・カルによる【何の目的もない、知らない人の尾行】の実行を思い立ち、隣人の尾行を始めることで物語が進んでいく。
その行為は【文学的・哲学的尾行】と解釈されており、物語は、終始、主人公の目線で描かれている。
題名が【二重生活】とあるが、物語は大まかに四つの生活が絡められて進んでいく。
【主人公と同棲相手との生活】
【主人公が尾行する相手と、その妻との生活】
【尾行の対象者と、彼の不倫相手との生活】
【同棲相手と、彼の雇い主との生活】
それぞれの生活が絡み合う中で、主人公が自分自身を見つめ直しながら、本当の自分を見つける物語だと理解することで、何とか最後まで読み通すことができた。
と言うのは、作者が女性ということもあり、私には理解に苦しむ箇所や描写があったからである。
これまで読んだ作者の作品でも、女性特有の感性で描かれている部分が多く、男、それもこの歳の私では、いささか頭が回りきらなくなってしまうのだ。
それでも、読後感としては悪いものではなく、えもいわれぬ思いが張り付いた不思議な感覚を体験させてもらった面白い作品である。
因みに、某動画サイトで同名の映画がやっていたので観てみたが、別の作品と思えるほどの内容だった。原作のエッセンスをさらりとなぞったとしか感じられなかったのだ。
それでも、若い女性の成長物語として観るのなら面白いかも知れない。
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