ライス・カレーをご存知だろうか?
ご存知の方は、恐らく私と同年代、もしくはそれ以上の方だろうと思われる。
試しに、20代の若者に聞いたところ、まったく知らなかった。
ライス・カレーとは、つまるところカレー・ライスと同意語に他ならないのだが、両者の違いを同年代の友人たちと真剣に話し合ったことがある。
酒を煽りながら夜が更けるまで議論を尽くした末
- カレー・ライス:カレーとご飯が別々に出てくる
- ライス・カレー:カレーがご飯の上にかかっている
との説が大勢を占めた。
しかし、これからすれば、某カレー専門店はライス・カレーということになってしまう。
私は、お金を払って外で食べるのが【カレー・ライス】家で食べるのが【ライス・カレー】と断固主張した。
更に厳密にいえば、母が作るうどん粉でとろみをつけた黄色いカレーが【正統なライス・カレー】であると主張したのだが、当時の仲間には受け入れてもらえなかったのだ。
とは言え、とんかつ、すき焼きなど、他にもご馳走があったのにも関わらず、私にとってライス・カレーは、それもに勝るご馳走だった。
しかし、記憶を辿ったとしても、あの、えもいわれぬ香りに子供心が操られていたことしか思い返せない。
後日、その中の友人と今までに食べたもので1番旨かったものについて話したことがあった。
彼が「おふくろのカレーだな」といい、私が「豚こまが入ってて、うどん粉で固めた黄色いやつだろ?」というと「俺んちは貧乏だったから、竹輪のときが多かったけどな」と言った彼の目が潤んでいた。
やはり、私たちの年代にとってのライス・カレーは格別の意味を持つ食べ物なのである。
それにしても、当時のライス・カレーは、そんなに美味しいものだったのだろうか?
***
イギリスの昔話の、こんな一節を思い出した。
船乗りが、仲間たちに子供のころの話を聞かせていた。
「俺の家と隣の家の間に小さな雑貨屋があってな、俺はいつだって店先にあった外国の地図や珍しいおもちゃなんかで遊んでたものさ。俺が船乗りになったのは、その雑貨屋のお陰なんだ」
やがて長い長い航海の末、その船乗りは自宅に戻ってきた。
しかし、自宅と隣の間には雑貨屋などはなく、子供が独り座れるだけの隙間に空箱が置いてあるだけだった。
=引用元不明=
私の食べたライス・カレーは、案外、その隙間みたいなものだったのだろうと思うことにしている。
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