Elmo Hope(p)//Donald Byrd(tp)//Hank Mobley(ts)//John Coltrane(ts)
Paul Chambers(b)//Philly Joe Jones(ds)
Jun.1956 PRESTIGE
【Sonny Clark】の例を出すまでもなく、アメリカと日本での評価が分かれるジャズ・ミュージシャンが存在する。
【Elmo Hope】も、その一人である。
主に管楽器を中心に聴いている私なので、確かなことは言えないのだが、彼の日本での人気は、彼のリーダー・アルバムの少なさからきている思っている。
近頃では、容易に入手できるようになっているが、以前なら彼のアルバムは貴重盤として法外な価格で出回っていた。
生粋のジャズ・ファンの方々とすれば垂涎の的となるのは当然だろう。
それがそのまま評価となって現れたのだろうと推察できるのだ。
ジャズ・ピアノに関しては【Bill Evans】で固まってしまった私であるから、偉そうに批評などするなどおこがましい。
それでも好みの範疇で言えば【Elmo Hope】のピアノからは何も伝わってこなかったというのが私の評価である。
事実、彼のリーダー・アルバムはこの1枚しか所有していない。
しかし、好きか嫌いかと問われれば、間違いなく好きなアルバムなのだ。
それは、参加しているメンバーに起因している。
当時、黄金期にあった【Miles Davis Quintet】からの3人【John Coltrane】【Paul Chambers】【Philly Joe Jones】と、若手として乗りに乗っていた【Donald Byrd】【Hank Mobley】の2人、これだけでも私としては十分なのだ。
【Polka Dots and Moonbeams】での【Donald Byrd】の演奏は秀逸だし、ミディアム・テンポのブルース【On It】でのテナー競演も聴き応えがある。
やはり、テナー好きの私としては、既に、ブルー・ノートで多くの録音に参加し、独自のスタイルを確立しつつあった【Hank Mobley】と【Miles Davis】に見出され、成長著しい若手テナー奏者である【John Coltrane】の競演が聴きたくて手に入れたと言ってもいい。
この年代では、自分のスタイルが出来上がりつつあった【Hank Mobley】の方に分があり、堂々と吹いている。それに比べ【John Coltrane】の演奏は、迷いながら吹いている印象が強い。
しかしそれも、5年後に録音された【Someday My Prince Will Come】では、完全に逆転してしまい、その差は開いてゆくばかりだったことは周知の事実である。
5年という歳月の中での変化と、その後の進化を考えれば【John Coltrane】には、天才とか偉大などという言葉では表しきれない崇高さを感じてしまうのは、私だけだろうか。
このように、アルバム・リーダーを差し置いた印象しかないアルバムなのだが、私の中では名盤として分類されていることに、疑う余地のない1枚でもある。
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