酒場詩人の流儀

吉田 類(著)中央公論社 2014

某TV番組で有名な著者による紀行エッセイである。

くだんの番組は、すすめられるまま数回観たことがあるのだが、面白さが判らなかったことと、TV番組特有の押し付けがましさに辟易へきえきしてしまい、匙を投げてしまった。

昨今の大衆酒場ブームの火付け役にもなったと言われる番組なので、観る方が観れば面白いのだろうが、残念ながら私には合わなかったのだ。

あくまでもTV番組の一環として放送されているのであるから、当然のように作られている訳だが、そこのところを勘違いしてはいまいか。

挙句、巷に多くのエセ吉田類が出現しているのが現実だろう。

見ず知らずの方から『かんぱい、いただきま~す』と言い寄られても、私なら困ってしまう。

そんな訳で、本書も冷めた目で読みはじめたのだが、それは完全な間違いだった。

紀行エッセイとあるように、著者が旅先で出逢った事柄が、俳人としての顔もお持ちの作者ならではの簡潔な文章で綴られている名著だったのだ。

酒は無論、山歩き、渓流釣りと盛り沢山な内容で、あまりの面白さに、一気に読み終えてしまった。

同時に、著者を近視眼的にしか評価していなかった自分を恥じているところでもある。

とは言え、間違っても件のTV番組を観ることはないと思う。

増してや【プロの酔っ払い】を自称する身としては、本書での姿が、著者本来の姿であって欲しいと願わずにはいられないのである。

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