酒好きが高じて酒場のオヤジになって、早いもので18年目である。
店が年を重ねれば、当然のように、あちこちで不具合が出はじめ買い替えをしなくてはならなくなる。
人間も同じでガタがくるのは仕方ないが、替えが利かない分、手入れしながら騙し騙し行くしかない。
それでも、人間のいいところは、重ねた歳のぶんだけ角が取れて丸くなってくるところだろう。
中には尖んがっていらっしゃる方もお見受けするが、それはその方の生き方なのだから、私がとやかく言うものでもない。
丸くなられた方からお話を伺うと、丸くなると楽になる部分が増えてくる一方で、しゃくの種も増えるとおっしゃる。
まさしくその通りである。
そして酒場のオヤジとしては、それを抑えるのには、やはり【自棄酒】が好都合なのだ。
例えば、こんな夜など。。。
***
「スコッチは何がある?」
来た来た来たぁ~この年代の方はスコッチ信者が多いしなぁ、でも。。。
「申し訳ありません、うちはバーボンが多いので、スコッチはこちらのメニューにあるものぐらいしか置いてありません」
「バーボンかぁ~俺はウイスキーしか飲まないんだよなぁ~」
だよな、きっとそう来ると思ってた。でも、バーボンもウイスキーだよ~
「よろしければ、こちらのバーボン・リストからお選びください」
「んん~~じゃ、これをくれ」
んん~~指さされても、ちょっと見えにくいんだけど。。。はいジム・ビームね
「飲み方はどうされますか?」
「(どや顔)ハーフロック!」
えっ?何故にどや顔?
***
その後は、予想通りの的外れなスコッチ講釈に、適当な相槌を打ちながら付き合い、ひたすら閉店時刻を待つこと数時間。
結局、店には3本しか無い500円のバーボンを1杯ずつチョイスされ、どや顔ハーフロックで召し上がって、気分よさそうに帰っていかれた。
こんな夜ぐらいは【自棄酒】も許してもらえるだろう。
でも、それが、やけに旨かったりするから始末が悪いのである。
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