
ボーナス・トラックは、お得?

CD化されたアルバムには【ボーナス・トラック】が加わったバージョンが多くあります。
レコード両面の収録時間は40分前後ですので、それをCD化すれば、30分以上が余ってしまいます。

CDの最大収録時間は74分です。
それは勿体ないということで【ボーナス・トラック】として、別テイクなどを加えたのが、この手のアルバムなのです。
以前、この件について、ジャズ・ベーシストの方とお話したことがあります。
その方は【お得感があっていい派】でしたが、私は【ボーナス・トラック無用派】なのです。
理由は、アルバムとして聴いた場合【ボーナス・トラック】は邪魔に感じてしまうのです。
特に、私の好きなブルー・ノート・レーベルのアルバムは、曲順まで考えられて収録されているとしか考えられないほど、アルバムとしての完成度を感じます。
試しに、アルバム内の曲をプレイ・リストにして、曲順を入れ替えて聴いてみたところ、視聴後の満足感が違いました。
しかし、ブルー・ノート・レーベルでは顕著だったこの現象も、プレステージ・レーベルのアルバムで試したところ、あまり違和感を感じませんでした。
この時代における、各レーベルが目指していた方向性の違いなのかも知れません。
ボーナス・トラックは、必要なの?

【無用派】の私としては『ボーナス・トラックなんていらない!』と言いきってしまいたいのですが、それができないところが厄介なところなのです。
例えば、1961年にビル・エバンス・トリオがジャズの聖地とも呼ばれるニューヨークのビレッジ・バンガードで、昼と夜を合わせて3セットのライブを行いました。
その演奏の中から抜粋して、2枚のアルバム【Bill Evans trio Sunday at the Village Vanguard】と【Waltz for Dabby】がリリースされました。

【Waltz for Dabby】は、ジャズの名盤案内では必ず紹介される有名なアルバ ムです。
【セロニアス・モンク】の項でも書いた双子とか兄弟とか呼ばれるアルバムです。
この2枚のアルバムには、片面3曲ずつ計12曲が収められてます。
しかし、当日演奏されたのは22曲で、それを聴くのには12枚組の【リバーサイド・コンプリート・ボックス】を手に入れるしかありませんでした。
ところが、後にCDとして発売されたアルバムには、ボーナス・トラックが追加されていて、こちらを揃えれば、ほぼ全曲を聴くことができるのです。
これを知った時には『そんなボーナス・トラックなら、捨てたもんじゃない』と思いかけた時もありました。
それも【The Complete at the Village Vanguad 1961】の3枚組のボックス・セットがリリースされたことで解決しました。
これは当日録音された音源に編集を加えることなくCD化したもので、アナウンスや会場の騒めき、サウンド・チェックの様子まで余すところなく入っていて、居ながらにしてライブを味わえる内容になっています。
それ以上に、ビル・エバンス・マニアの間では噂が絶えなかった1曲も入っている代物なのです。
それは冒頭の演奏【Gloria’s Step】が、始まって1分を過ぎたあたりで、停電のため突然途切れてしまいます。
数秒後には何事もなかったように再開されるのですが、当然不完全テイクですので、陽の目を見ることが無かった演奏です。
発売当時は5.000円前後の価格でしたが、これを納得するか高いと思うかは人それぞれです。

私は即買いしましたが、今では中古も含めて2.000円前後で手に入ります。
話が逸れてしまいましたが【ボーナス・トラック】への思いは、アルバムをどのようなスタンスで聴くかで決まってくるようです。
それ以前に、アルバム単位ではなく曲単位でストリーミングするご時世ですので、早い話『どうでもいいこと』なのだと、あらためて気づいたところです。
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