黒い輪|権力・金・クスリ・オリンピックの内幕

ヴィヴ・シムソン // アンドリュー・ジェニングス(共著) 広瀬 隆(監訳) 1992年 光文社

本書は金メダルをめざす選手たちの話ではない。背広に身を包み、自分たちの意のままにスポーツを操る男たちの、隠された世界の話である。

冒頭に書かれたこの一文からわかるように、アマチュア・スポーツの頂点であるオリンピックの裏側を描いた一冊である。

誘致合戦をはじめとした、オリンピックに関わる不透明なお金の動きを懸念する声は、年を追うごとに多くなっているが、一向に是正される兆しは無く、それどころか、年々その力を増しているようだ。

間もなく(2012年執筆現在)ロンドン・オリンピックが開催されるが、しくも、ふたりの著者はイギリスのジャーナリストである。同国は、世界を代表する民主国家であると共に、今もって貴族社会が支配しているとも言われている。

本書の原題【The Lords of the Rings】を直訳すれば【五輪の貴族たち】となるように、著者たちの持つ貴族社会への反感が目隠れする部分も多い。それと同時に、ふたりの目線が、その貴族社会と同列の高さと思われる記述もあり、その点は気になった。

本書が発行された1992年は、バルセロナ・オリンピックが開催された年でもある。

その年代を、そのまま現代に当てはめるには、はばかられる部分もあるが、中心的なテーマとして貫かれている【汚れた金】に関して言うなれば、現代でも何ら問題はないと思う。

オリンピックについて、一歩退きながら考えるてみようとする機会があれば、一読しても損はないだろう。

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