バーの扉を初めて開くのは勇気が必要です。
私もそうでした。
ドキドキとワクワクが入り混じった不思議な気持ちで店の前に立ち、開かれるのを拒んでいるような扉を開けた瞬間を、懐かしく思い出します。
それ以来、独りで飲むときはバーと決めて飲み歩き、今ではバーのオーナーになってしまった私の経験談を交えながら、バーの扉までご案内をいたします。
扉を開けるかどうかはご自身の考えでよろしいですので、気軽にお付き合いください。
バーってどんな所?
入りにくい店の代名詞のように使われるバーと呼ばれる飲食店。
そうなんです。バーの括りは飲食店なんです。
オーナーが 『私の店はバーです!』 といえば、その店はバーなんです。
如何でしょう?少しはハードルが下がった気になりませんか?
とは言え、誰もがバーに抱いている入りづらい理由の半分は当たっています。
逆に言えば、それがバーの特徴でもあり、魅力でもあるんです。
すでにこのあたりで、バー・デビューを諦めかけた方もいらっしゃると思いますが、もう少し頑張ってください。
私が若いころに身に着けた、とっておきの方法をお知らせします。
バーは3種類
私にとってのバーとは 心づかいが詰まった場所 とも言えます。
店主が客に対するものはもちろん、その逆であったり客同士のそれであったりと、様々な心づかいがギュッと詰まった場所がバーだと思うことにしています。
だからこそ、独りで飲むのならバーをお勧めしています。
ここからは、巷に数あるバーを3種類に分けて説明していきます。
- ちゃんとしたバー
- ゆる~いバー
- 店名がバー
乱暴な分類法ですが、ずっとこれで通してきた経験からすれば、外れは無いと断言できます。
ただし、厳密な線引きがある訳ではないので、限りなくちゃんとしたバーに近いゆる~いバーがあったり、その逆パターンもあります。
そのあたりの判断は経験から学ばなくてはなりませんが、慣れればそれも楽しくなってきます。
そうは言っても『頭に毛がないくせに、心臓には毛が生えてる』 と言われる私ならではかも知れませんので、ちょっとしたコツも交えながら進めていきます。
そのコツは
*
扉の前に立ったら、臆することなく開いてください。そして店内の様子を観察してください。
そこで、思った以上に高そうだったり、騒がしかったり、そもそもバーじゃなかったり等々、思ったような店でなかったら 『ごめんなさい。間違えました』 と言って扉を閉めるだけです。
*
簡単でしょう。
扉を開く→観察する→ひとこと謝って扉を閉める
大丈夫です。追いかけられて叱られるようなことは決してありません。
それはバーのオーナーとして断言できます。
ただし、店に入ってしまったらやらないでください。
それはエチケットに反しますし、店によっては、それなりの対応をされる場合もありますので要注意です。
それでは、3種類のバーの特徴をお知らせします。
ちゃんとしたバー
一般的に【オーセンティック】と呼ばれているのは、格式のあるバーを指す名称ですが、真っ先に浮かんだのが、そういった店ではないでしょうか。
あるいはバーと聞いて何となく浮かんだのが一流ホテルのバーだったり、どこに座って、何を飲んだらいいのか、どうやって注文するのか等々、入りづらい原因になっているイメージはすべて忘れてください。
ここでいうちゃんとしたバーとは、自分のための時間を提供してくれる居心地のいい店のことです。
バーに通い始めて高々40年余りの私ですので、偉そうなことは言えませんが、私の中でここのブロックに入るバーを数えると片手で済んでしまいます。
そして、そこへお邪魔して飲んでいるときは、何物にも代えがたい至福の時間が流れる贅沢な場所に居られる幸せを感じられるのです。
この記事を書こうとした切っ掛けも、そこにあります。
体に良くないと蔑まれる飲み物を体に注いでいるのですから、そんな幸せ感を味わうのを目標に、自分だけのちゃんとしたバーを探されては如何ですか。
それには、まずは次のブロックにある店から始めるのが手っ取り早いと思います。
メリット
- 他では味わえない最上級な至福の時間を過ごせる。
- 美味しい酒が堪能できる。
- 穏やかで優しい気持ちになれる。
- 明日も頑張れそうな気持にしてくれる。
デメリット
- 上のメリットを感じられる店と出逢える確率が極めて低い。
- 一生出逢えない確率の方が高い。
- 勝手に決められた暗黙の了解事項が多い形だけのちゃんとしたバーと出会う確率が高い。
- 単純に出費が多くなる可能性が高い。
ゆる~いバー
巷にあるバーの大半はここのブロックにはいります。
そして、初めてバーを目指すならこのブロックで決まりです。
ただし、上下の幅が広いので、初めは戸惑うかも知れませんので、一例として私の店を紹介してみます。
- 名古屋の片隅で営業を始めてから17年になります。
- バーボン・ウイスキーを中心としたアメリカン・タイプのウイスキーがメインです。
- カクテルは基本的なリクエストにはお答えできます。
- BGMに私の好きな50、60年代の古いジャズを流しています。
- 上記の関係で当店をバーボン・バーもしくはジャズ・バーと称される方もいらっしゃいます。
- 開店当初は50代の方が多くお見えでしたが、ここ数年は30代の方が中心となっています。
- 半数以上は独り飲みの方で、男女比は女性が多いです。
- 外から店内が見えない構造と、扉の作りから入りにくい店です。
ここからは、当店にいらっしゃらない方がいい、もしくはいらっしゃっても面白くない方です。
- バーと言えばモルトだと凝り固まっているモルト好きの方。。。私好みの16本しかありません。
- 独り飲みの女性を目当てにお越しになる男性。。。通常は私が盾になります。
- すでに出来上がってからご来店される方。。。店に入れません!
- カウンターでベタベタされるカップルのお二人。。。私の機嫌が悪くなります。
如何でしょう。何となく想像できたでしょうか?
このあたりを中心に【ちゃんとしたバー】へ上るゾーンと【店名がバー】へ下るゾーンに分かれます。
前出したコツを駆使して扉を開け閉めしながらバー巡りを楽しむことから始めましょう。
当たり外れはあります。初めは外れの方が多いかも知れません。経験からすれば、結構外れます。
でも『外れの店が判ったからOK』と思えば収穫があったことです。
マイナスもプラスに考える性格なので申し訳ない
そうすれば、いつの日か、あなたのためのちゃんとしたバーと巡り合えると保証します。
メリット
- 自分好みの店を見つけやすい。
- 自分の好みが判ってくる
- いろいろな店を体験できる
- バーで飲むことに慣れてくる
- リーズナブルな店が多い
デメリット
- ジャンルが広すぎて判りにくい
- 当たり外れが多い
- 外れ方が尋常でない店がある
店名がバー
最後に残ったのが厄介なブロックです。
世の中には店名にバーのついた店は数多ありますが、明らかに内容が判る店であれば、知って入るので問題ありません。
例えば、ガールズ・バー、日本酒バー、焼き肉バー等々です。
余談ですが【バー・スナック】という店を見つけて???が飛び交い、でも面白そうなので入ったことがあります。そこは面白かったです。
厄介なのは、店構えや店内はバーなのに、やってることが理解できない店と遭遇することです。
私が遭遇した例を挙げれば
- 店側からの注文がやたらと多い。飲み方に始まり、オーダーの仕方からグラスの持ち方まで教えてくださる。
- 酒に関してあまりにも無知。せめて店内にあるボトルの名前ぐらいは知っておいて欲しい。
- カクテルの基本が。。。炭酸入りのシェーカーを振ればどうなるか判らない?
- 自慢話が長すぎる。挙句、それを肴に飲む羽目になる。
まだまだ挙げれば枚挙に暇がないのですが、この手の店と遭遇してしまったときは、早々に退散して
『交通事故にあったけど、怪我しなくてよかった』と思うことにしています。
私など足元にも及ばないバー達人の方々は、そんな店でもそれなりに楽しんでしまうとのことですが、まだその境地には達していません。
メリット
- 経験値が増える。
デメリット
- 酔えない。
- 美味しく飲めない。
- 口直しに次の店を探さなければならない。
- しばらくダメージを引きずる。
まとめ
如何だったでしょう?
『そんなことまでして探さなくちゃいけないの?』と思われた方がいらっしゃったら、ほかの飲み方を考えられた方がいいと思います。
でも、少しでも『面白そう!』と思われたのでしたら、ぜひ実践してみてください。
想像以上に面白いです。
行きつけのバーを見つけ、それがちゃんとしたバーだったときの嬉しさは何物にも代えられません。
人生のゴールが見え隠れしてきた私ですので、今さら嘘は言いません。信じてもらって大丈夫です。
合言葉は『バーへ行こう』です。
もしご近所でしたらお気軽に実店舗へお越しくだされば、ここで書くのは憚れるエピソードを、酔いに任せてお話しするかも知れません。
コメント