ウイスキーの消費量は、80年代初頭をピークに落ち込みはじめ、90年初頭のバブル崩壊が追い打ちをかけ、ピーク時の1/5まで落ち込んだと言われています。
それを救ったのが2000年初頭に某メーカーが仕掛けた【ハイボール・ブーム】でした。
私の年代では、【ハイボール】と言えば、ジジ臭い印象しか無かったのですが、お洒落なCMのお陰で、若い層に受け入れられた結果なのでしょう。
店でも、若い方を中心に【ウイスキーのソーダ割り】をリクエストされる方が多くなりました。
【ソーダ割り】は、気軽に飲んでこそ真価が判ると思ってきましたので、お値打ちな価格帯(¥700)の銘柄で飲み比べてみました。
急に寒さが和らぎ、春の兆しを感じられるようになってきましたので、そろそろ【ウイスキーのソーダ割り】は如何でしょう?
バーボン・ウイスキー
【ドライ】な銘柄と【コク】のある銘柄を選びました。
同じ価格帯で他の銘柄もありますが、似通っているので、代表的な銘柄にしました。
I.W.ハーパー・ゴールドメダル
銘柄の指定が無く『バーボンのソーダ割り』とリクエストされた際に作る銘柄です。
ドライな飲み口とソーダの相性がピッタリで【バーボン&ソーダ】では、ずっと、この銘柄一択でした。
今回も真っ先に作り、久しぶりに飲んだのですが、喉ごしの良さだけが際立ち、何かが足りないと感じられました。
ゴクゴクと飲み干すのが【バーボン&ソーダ】だとすれば、満点なのでしょうが、味わいという点では物足りなさが残ります。
そうは言っても、ソーダとの相性は特筆するものがありますので、初めて【バーボン&ソーダ】を飲まれる方にはおすすめします。
これからも、銘柄の指定が無い限り【バーボンのソーダ割り】には、この組み合わせで提供します。
エヴァン・ウイリアムス
今回、最も気に入ったのが、このエヴァン・ウイリアムスです。
昔からお気に入りの蒸溜所なので、ソーダで割ったことがなく、今回が初体験でした。
エヴァン・ウイリアムスの特徴はバランスの良さです。
言い換えれば、万人受けする飲み口なので、それが可もなく不可も無くと称されることもあります。
でも、バーボンを初めて口にされる方にバーボンらしさを知っていただくには、丁度いいバランスなのです。
それがソーダで割っても崩れないことを、今回知りました。
ドライなだけでは無く、コクや甘さもバランス良く保たれていますので、味わいながら飲みたい方におすすめします。
この歳になって、新しいことを知るのは嬉しいものです。それが、好きなことなら尚更です。
エヴァン・ウイリアムス・ボンデッド
スタンダードのブラック・ラベルが美味しかったので【100プルーフのボンデッド】も試してみました。
ボンデッド好きなので、期待して飲んだのですが、微妙な結果でした。
エヴァン・ウイリアムスの持ち味でもあるバランスが崩れて、苦みが現れてきたのです。
言いかえれば、それがドライに感じられる方は、ソーダ割りがおすすめできます。
以前、別のハイプルーフ・バーボンをソーダで割った時を思い出しました。
銘柄にもよりますが、ハイプルーフだからと言って、度数を下げる意味でソーダで割ると、バランスが崩れる場合があります。
エヴァン好きの私は、素直に加水した方が好みでした。極端な話、水割りでもOKかな?
テネシー・ウイスキー
日本でのテネシー・ウイスキーはジャック・ダニエルが大半をしめています。
店在庫している他の銘柄も試したかったのですが、残念ながら価格帯が違ってしまうので、今回は断念しました。
ジャック・ダニエル
『ジャック・ソーダ』とリクエストされることが多い銘柄です。
この価格帯のテネシー・ウイスキーはコレだけですので、他の選択肢があリませんでした。
雑味が少なくドライな銘柄なので、ソーダとの相性はいいので、ジャック・ソーダ好きが多いのも頷けます。
ジャック・ダニエルには特有の風味があり、それでファンになる方も多いのですが、気になる方はダメなようです。
それはソーダで割っても消えないので、好まれない方には無理かも知れません。
これは当店だけかも知れませんが、ジャック・ダニエルに関しては【ソーダ割り】か【ロック】かに分かれます。
そして、その飲み方を変えずに飲み続けるのが、ジャック・ファンの飲み方のようです。
テネシー・ウイスキーと言うより、ジャック・ダニエルのファンが多いです。まだ飲んだことが無い方は、一度試されてはいかがでしょう。ひょっとするとハマるかも知れません。
ライ・ウイスキー
これまでライ・ウイスキーをソーダで割る発想が無かったので、今回が初体験でした。
ライ・ウイスキーは、高目な価格帯のものが多いので、この銘柄だけになってしまいましたが、古くから定評のある銘柄なので、参考になりました。
オールド・オーバーホルト
ライ・ウイスキーの風味は個性的ですが、協調性があります。
他の風味と混ざり合ったときに、喧嘩するのではなく、控えめに存在をアピールするのです。
マンハッタンなどのベースに使われることが多いのは、そのためでしょう。
逆の見方をすれば、ライ・ウイスキー好きの方は、単体で飲まれることが多い要因にもなっています。
ソーダは無味無臭なので、風味自体は損なわれませんが、ライ麦の個性が薄まってしまいます。
入門用にはおすすめできますが、飲み慣れた方でしたら拍子抜けするでしょう。
ライ好きの私としては、やっぱり、そのまま飲みたいです。どうしても何かで割るとしたら、濃い目の水割りってところに落ち着きます。
アイリッシュ・ウイスキー
アイリッシュ・ウイスキーの双璧とも言われる蒸溜所の銘柄を選びました。
近頃は入手できる銘柄も増えて、認知度も上がっているアイリッシュ・ウイスキーを【ソーダ割り】でも試してください。
ブッシュミルズ
アイリッシュ・ウイスキー最古の蒸留所と言われている銘柄です。
アイリッシュ・ウイスキーならではの、素朴な風味が特徴で、それがソーダで割っても崩れませんでした。
アイリッシュ・ウイスキーを飲むきっかけとなった蒸留所の銘柄でしたので、ちょっと嬉しかったです。
是非とも【アイリッシュ・ウイスキーのソーダ割り】として飲んでいただきたいです。
飲む機会が少ないカテゴリーのアイリッシュ・ウイスキーを試してみませんか?
【アイリッシュ・ウイスキー】入門用には、別の銘柄をすすめてきましたが、ソーダで割る場合は、この銘柄に決めました。
ジェムソン
アイリッシュ・ウイスキー最大手のミドルトン蒸留所の基幹銘柄です。
販売量と共に知名度も高いので、ご存じの方は多いことでしょう。
アイリッシュ・ウイスキーと言うより【ジェムソン】としての認知度の方が高いと思われます。
まったくクセが無いので、ソーダを単体で飲んでいるような印象を受けてしまいます。
そこが万人受けするのでしょうが、ウイスキー好きには、物足りなさを感じるのも事実です。
やはり、メーカー推奨の【ジェムソン・ジンジャー・ライム】で飲んだ方が、飲み応えがありますので、そちらをおすすめしたいです。
ジェムソンに関してはスタンダードよりも【ブラック・バレル】をおすすめしたいのですが、今回の趣旨と違いますので、別の機会にします。
【Jun. 2024 :追記】
現段階でアイリッシュ・ウイスキーのソーダ割はコチラがおすすめです。
スコッチ・ウイスキー(ブレンデッド)
この価格帯のブレンデッドは2銘柄しかありませんでした。
余談ですが、ブレンデッドのソーダ割り(水割りも含む)には、それぞれのキーモルトを、少しフロートしてから提供しています。
これは私の好みだけですので、ご不要な方は、ご注文の際にお知らせください。
デュワーズ12年
単に『ハイボール!』とリクエストされたときに使う銘柄です。
このようにおっしゃる方は、押しなべて年配の方が多いので、昭和の頃に飲まれていた【ハイボール】のイメージで選択しました。
ブレンデッド好きの私としては、この価格帯で一番好きな銘柄を選んだのですが、今どきのイメージとは、少し違っています。
キーモルトにもなっている【アバフェルディ】の個性が色濃く出るので、ホワイト・ラベルのようなドライ感がありません。
デュワーズのソーダ割りには、通常ホワイト・ラベルが使われることが多いのはそのためでしょう。
昔ながらの【ハイボール】を飲みたい方におすすめします。
今後も『ハイボール!』と言ってくだされば、無条件でこの組み合わせで提供します。
フェイマス・グラウス
今回どうしようかと、最も悩んだ銘柄です、
昔から好きな【ハイランドパーク】が、キーモルトに入っているので仕入れましたが【マッカラン】や【タムドゥー】のスペイサイドが幅を利かせていたので飲まなくなっていました。
ところが、ソーダで割ると【ハイランドパーク】が元気を取り戻したのです。
一般的な【ウイスキーのソーダ割り】のイメージとは違いますが、甘さとのバランスは【ハイランドパーク】のものだと信じています。
【ストレート】と【ソーダ割り】のイメージが豹変するので、おすすめする対象に困ってしまいます。
【デュワーズ12年】よりはドライ感がありますので、今風の【ハイボール】としてお試しください。
嫌いではありませんが、自分で飲むときは、ちょっと贅沢ですが、普通に【ハイランドパーク】のソーダ割りを作ってしまいます。
まとめ
ここでは書きませんが、ハイボールの語源には諸説あります。
中には眉唾なものもありますが、それもまた面白いので、機会があれば調べてみてください。
因みに、広義で言えば、スピリッツやリキュールを、炭酸飲料およびフレッシュ・ジュースで割ったものを指すとのことです。
それに習えば、カシス・オレンジもハイボールってことになりますので、ずっと【ソーダ割り】で通してきました。
でも、そのあたりは酒場の会話の範疇に留めて置くのがいいでしょう。
日頃は【ソーダ割り】をあまり飲まないので、今回は楽しみながら飲むことができました。
ハーフ・サイズとはいえ、合計10杯以上飲んだので、後半のレビューは当てにならないかも知れませんが、飲まれる時の参考になれば、酔っ払った甲斐があります。
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