【アメリカン・ウイスキー】も、いよいよ最後の【コーン・ウイスキー】になります。
これまでの3種類アメリカン・ウイスキー(バーボン、ライ、テネシー)と比べると、異色と言ってもいい部類に入るウイスキーです。
製造が始まったのは、独立戦争以前の18世紀後半にとされていますので、ライ・ウイスキーよりも古いということになります。
その後の禁酒法時代には、未熟成で出荷できるため、安価な密造酒の主流だったようです。
ジャム瓶のようなボトルに入った【ジョージア・ムーン】は、その当時の雰囲気を模していると言われています。
コーン・ウイスキーの特徴を挙げるとすれば、好き嫌いが真っ二つに分かれるところでしょう。
もちろん私は好きですが、嫌いな方はまったく受け付けない味だと思います。
乱暴な言い方をすれば【ウイスキー】と言うよりは【スピリッツ】として飲めば印象が変わるかも知れません。
【コーン・ウイスキー】の紹介では『コーンの優しい甘さを感じられる。。。』との表現が使われることが多いですが、その先入観で飲むと裏切られるでしょう。
何を『甘さ』と表現しているのかは判りませんが、長年飲んできた経験から言えば、仄かな香りは感じますが、あまり甘さを感じたことはありません。
そもそも優しさを求める飲み物ではないと思っています。
コーン・ウイスキーとは
コーン・ウイスキーとして出荷するための条件は、大きく分けてふたつあります。
- 原料の80%以上がトウモロコシ
- アルコール度数80%以下で蒸留
熟成期間は定められていませんので、蒸留したての未熟成でも集荷できます。
このタイプは【ムーン・シャイン】と呼ばれ、無色透明で、見た目も味も一般的なウイスキーとは違う趣です。
また、樽熟成して出荷する場合は、バーボン樽とは違い、内側を焦がしていない新樽もしくは中古の樽での熟成と決められています。
新品のバーボン樽で熟成した場合は【バーボン】とみなされます。
因みに、I.W.ハーパーを含めた数社のマッシュビルは、コーンの比率が80%を超えていますが、バーボンとして出荷されているのはそのためです。
当店にあるコーン・ウイスキー
日本で手に入る【コーン・ウイスキー】の銘柄は数社しか無いのと、それ自体の趣から人気が無いこともあり、お目にかかることは少ないと思います。
因みに、バッファロートレース蒸留所からは、ホワイト・ドッグという名称で熟成前の原酒を販売していますが 、これはスコッチ・ウイスキーでのニュー・ポットに当たるものです。
好き嫌いが分かれる【コーン・ウイスキー】ですが、気に入ってしまうと無性に飲みたくなる時があるのも事実です。
そんな方のために、当店にある【コーン・ウイスキー】を紹介します。
Platte Valley|プラット・バレー
【マコーミック蒸留所】
3年熟成された【コーン・ウイスキー】で、おそらく一番手に入りやすい銘柄でしょう。
とてもオーソドックスな飲み口で、入門用に最適です。
陶器製の入れ物(ストーン・ジャック)に入ったものもありますが、中身は同じでしたので、名より実をとり、こちらを常備しています。
Mellow Corn|メロウ・コーン
【ヘブンヒル蒸留所】
バーボンの中古樽で4年熟成されているので、色も香りもバーボンに近いものがあります。
名前通りの滑らかな口当たりで100プルーフを感じさせませんが、逆にコーンらしさも薄い感じがします。
私は『ちょっと趣が違うバーボン』の感覚で飲んでいます。
日頃バーボンを飲まれる方で、ちょっとコーンでもと思われる方におすすめしたいです。
George Dickel No.1|ジョージ・デュッケル No.1
【ジョージ・デュッケル蒸留所】
未熟成のタイプですので透明ですが【ジョージア・ムーン】のような荒っぽさは無く、スムーズな飲み口です。
それが両者の価格差に表れているのでしょうが、そこが【ジョージア・ムーン】ではなく、こちらを仕入れている理由でもあります。
この4銘柄の中では、一番【コーン・ウイスキー】らしさを感じている1本です。
Stillhouse|スティルハウス
【スティルハウス・スピリッツ】
2016年にボトルのデザインを現行の缶入りに変更して以来、出荷量が倍増したらしいですが、私もまんまとその策に嵌ってしまったひとりです。
中身は未熟成のムーン・シャインです。その割には、口当たりが柔らかくのみやすいのですが、逆に特徴がありません。
コスト・パフォーマンスから考えて、次回からの仕入れを思案中の1本ですので、飲みたい方はお早めにご来店ください。
まとめ
ジンやウォッカを始めとしたスピリッツとウイスキーの違いは、樽熟成がカギになっています。
蒸留したての原酒(ニュー・ポット)はスピリッツと言えるでしょう。
それを樽熟成することでウイスキーに変身するのです。
樽熟成を規定されていない【コーン・ウイスキー】をスピリッツと考えれば、さしずめ【コーン焼酎】といった感じでしょうか。
でも、そう言い切れないのは、焼酎が持つ独特の焼酎香が無いことと、アルコール度数が高い点です。
厳密に言えば、製造方法に違いはあります。
そんな【コーン・ウイスキー】ですが、肩から力を抜いて『ちょっと違ったウイスキーを飲む』感覚で飲んでみては如何でしょう。
ウイスキーの世界が少し広がると思います。
おまけ
私は焼酎を飲みません。
まったく個人的な理由と、焼酎独特の香りが合わないからです。
ところが、トウモロコシ100%で作られたうえ、樫樽で15年貯蔵された【野風】を見つけたので仕入れてみました。
発売元は鹿児島県の【濱田酒造】で、歴史のある蔵のようです。
焼酎に関しては門外漢なので、間違っていたら申し訳ありません。
早速、試飲したところ、仄かな焼酎香があるものの、ギリギリ許容範囲内でした。
焼酎の製造過程では、発酵に【大麦麦芽】ではなく【麹】を使うので香りが変わってしまいます。
そこで、メーカーが推奨する炭酸で割ってみると、焼酎香も和らぎ飲みやすくなったうえに、トウモロコシの香りも感じられるようになりました。
とは言え【焼酎】には変わりなく【コーン・ウイスキー】とは別物と言えるでしょう。
裏メニューで店在庫してあります。15年熟成とのことで、多少お値段が張りますが、興味のある方はリクエストしてください。
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