サザン・カンフォートって?
1800年代後半にアメリカで考案された、フルーツ感のある甘いリキュールです。
品質が安定しないバーボンに、ピーチやオレンジなどの果実と、シナモンなどのスパイスを漬け込んだのが始まりとされています。
一時期、ベースのバーボンがスピリッツに変更された時期がありましたが、現在はバーボン・ベースに戻っているとのことです。
バーボンをベースにしていたこともあり、アルコール度数が100プルーフ(50度)と、リキュールとしては珍しく高く設定されていました。
それが、時代と共に下がり続け、いま現在ではオリジナルは(21度)まで下がってしまい、全体に大人しくなっています。
その分、どなたでも気軽に飲めるようになったことで、消費量が増えたようです。
マイナーだったアイテムがメジャーの仲間入りを果たしたのは嬉しいことなのですが、70年代にはじめて口にしてぶっ飛んだ身としては、若干の淋しさを感じてしまいます。
以前、並行輸入品で(50度)のものを見つけて飲んでみた結果、味と価格のバランスに納得できなかったので、以後は入手していません。
それ以後は、入手しやすい(40度)の【ブラック】を常備して使っています。【オリジナル】(21度)との飲み比べもできますので、興味のある方は、違いをお試しください。
【サザン・カンフォート】は、ソーダやコーラなどの割材との相性がいいので、ご自宅で気軽に割って飲めるリキュールです。
でも、せっかくバーで飲むのですから、ひと手間かけたメニューを試していただきたくて、おすすめのカクテルをご紹介することにしました。
ジャック・ター|Jack Tar
|ラム|サザン・カンフォート|コーデュアル・ライム・ジュース|
横浜のバーが発祥と言われているカクテルです。
【サザン・カンフォート】のフルーツ感に、ライムの爽やかさを、クラッシュド・アイスで味わう、夏らしい飲み口になっています。
爽快な飲み口とは裏腹で、ベースのラムは、銘柄指定でロンリコ151(75.5度)を使いますので、アルコール度数が高いのでご注意ください。
そのうえ、店では40度の【サザン・カンフォート】を使っていますので、アルコールに弱い方は、リクエストされない方がいいと思います。
水夫(下級船員)を意味する【ジャック・ター】
【サザン・カンフォート】を使うカクテルでは、お気に入りの1杯なのですが、アルコール度数の関係で、気軽におすすめできないのが難点となっています。
ダブル・レインボー|Double Rainbow
|サザン・カンフォート|オレンジ・ジュース|レモン・ジュース|グレナデン・シロップ|
以前に紹介してありますので、そちらをご覧ください。
シシリアン・キッス|Sicilian Kiss
|サザン・カンフォート|アマレット|
アメリカ産の【サザン・カンフォート】と、イタリア産の【アマレット】を合わせた、国際親善のようなカクテルです。
どちらも、特徴のある風味を持っていますので、リキュールに詳しい方なら想像できるでしょう。
『桃と杏仁豆腐を一緒に食べている』みたいな感じです。
甘さも強く、アルコール感も少ないので、デザート感覚で飲まれる方もいらっしゃいますが、飲み口の割には、アルコール度は高いです。
因みに、江國香織さんの小説「神様のボート」の一節でも使われています。
ママはシシリアンキスというカクテルをのんでいた。
神様のボート 江國香識(著)
カクテルを作るのはパパの役目で、パパのつくるシシリアンキスは『倒れそうに甘くて病みつきになる味』だったそうだ。
グラスの液体はとろりとした琥珀色で、『午後の戸外の飲み物として、あんなに幸福なものはない』らしい。
氷が日ざしをうけてみずみずときらめくのだそうだ。
こんな文章を、お酒に詳しくない方が読まれたとしたら、きっと飲んでみたくなるでしょう。
でも、くれぐれもご注意ください、中々手ごわいカクテルです。
スカーレット・オハラ|Scarlett O’Hara
|サザン・カンフォート|クランベリー・ジュース|レモン・ジュース|
映画好きの方でしたら『風と共に去りぬ』のヒロイン名が浮かんでくるカクテル名です。
激動の歴史を、荒廃したアトランタで、力強く生きた【スカーレット・オハラ】をイメージして作られたと言われていますが、おそらくそんな感じはしないでしょう。
(21度)の現行品でつくると、甘さが際立ち、主演女優【ビビアン・リー】の、可愛らしいイメージになってしまいます。
それはそれでいいのですが、イメージとのギャップが気になってしまうのです。
正直、飲みやすさでは、コチラをおすすめします。(21度)の現行品も店在庫してありますので、お気軽にリクエストしてください。
何とも悔しいので調べてみると『風と共に去りぬ』の初演は1939年でした。
これは【サザン・カンフォート】が、まだ(50度)あった時代ですので、これなら芯の通ったカクテルになっただろうと、留飲を下げることができました。
店で使っている【ブラック】(40度)でも、その片鱗は伺えるので、それは確かだと思っています。
酸味の決め手に入れるジュースには指定がないので【ライム】が使われることが多いのですが、私は【クランベリー・ジュース】との相性がいい【レモン】を使っています。
閉店後に、こんなことを考えながらカクテルを作って試飲しているときが、いちばん楽しかったりするのです。
ボール・パーク|Ball Park
|サザン・カンフォート|テネシー・ウイスキー|ソーダ|
こちらは、神戸のバーが発祥とされているカクテルです。
アメリカ産の2銘柄を合わせているので【アメリカン・ミックス】などと呼ばれることもあります。
テネシー・ウイスキーは【ジャック・ダニエル】との銘柄指定がありますが【サザン・カンフォート】の半分の量ですので、主張は控えめです。
そのせいか、最後に絞り入れるレモンの爽やかさで、何杯でも飲めそうな気分になってしまうでしょう。
試しに、他のテネシー・ウイスキーでも作ってみましたが、オリジナルを超える銘柄は見つかりませんでした。
野球場の意味もある【ボール・パーク】
折りしも、WBCが開催されていますので、私には珍しくタイムリーなおすすめになりました。
【ソーダ割りの飲み比べ】でも触れましたが【ジャック・ダニエル】とソーダの相性はいいので、コチラもお試しください。
まとめ
私と【サザン・カンフォート】との出逢いはかなり古いです。
大きな声では言えませんが、ロック小僧だった10代後半、心酔していた歌姫【ジャニス・ジョップリン】が愛飲していたと知り、バンド仲間で回し飲みしたのが始まりです。
ひと口飲んで吐き出しそうになった記憶しか残っていませんが、彼女の歌と同様の強烈さを感じたことは残っています。
その後、四十路に入ったころバーで見つけ飲んだ時には『えっ、こんなに甘かった?』と思いました。
90年代後半ですので、まだ(50度)あったころだと思われますが、定かではありません。
酒に縁が無かった時代と、そこそこ飲み方が判ってきた時代では、受ける印象も変わってくるのでしょう。
独特な甘さと香りで、飲み手を選ぶリキュールだと思いますが、気に入ると抜けられなくなる不思議な魅力もあります。
まだ飲んだことが無いのでしたら、これを機会にお試しください。
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