ジェームズ・ガーナー扮する【デューク】の独白のような台詞から、この作品は始まる。
『私はどこにでもいる、平凡な思想の平凡な男だ。
平凡な人生を歩み。名も残すこともなく、じきに忘れ去られる。
でも一つだけ。誰にも負けなかったことがある。
命がけである人を愛した。
私にはそれで十分だ。』
観終わってから振り返ると、この台詞が、この作品のすべてを表しているのだと理解できた。
事実、以後の展開は、それを証明する物語が淡々と進められ、そして、彼にとって理想とも思える結末にたどり着くからである。
各サイトのレビューを見ると、ラブ・ストーリーとしての評価は、大半が肯定的な意見で占められていたが、少数ながら否定的な内容のレビューもあった。
私もそうなのだが、額面通り【ノア】と【アリー】の恋愛映画として観てしまうと、消化しきれない部分が残ってしまうからだろう。
全体を通じてヒロインでもある【アリー】の目線で語られている作品なので【ノア】の側に立てば、そう感じられるかも知れない。
しかし【一人の女性を愛しぬいた男の、人生ドラマ】として観た私には、心から納得できる秀逸な作品だと感じられた。それは、私の年齢が、語り部としての【デューク】に近いところが大きな要因なのだろう。
ただ一点だけ、二人が路上で踊る場面で流れる【Billie Holiday】の【I’ll Be Seeing You】は知っているのだが、後半で使われている、同曲の男性ボーカルが誰なのかがわからない。
【Frank Sinatra】や【Dean Martin】などの大御所は知っていても、この年代、特にボーカルに関しては門外漢なので知る術がないのだ。困ったときの【YouTube】先生に頼ってみたが、見当たらなかった。
私には、そこだけが消化不良として残っている。
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