そうだ京都、行こう

二十歳前後は京都で暮らしていました。

ほんの数年のことですが、この街が私に与えた影響力は計り知れないものがあります。

ロック一辺倒だった私がジャズと出逢ったのもこの街ですし、あるひとを心底好きになり、彼女の影響から、読書好きになったのもこの街です。

やがて、人生何度目かの失恋を経験したのもこの街なのです。

そのとき味わった心のザラツキは、この歳になっても時おり蘇ります。

現在いま営んでいるバーでの所作を覚えたのは、この街で勤めたアルバイト先のお陰ですし、よく生きていられたなと思える極貧生活を経験したのも京都なのです。

名古屋に戻ってからは、数年に一度の割合で、京都近郊で暮らす友人をたずね方々、懐かしい街に出向いたこともありました。

しかし、今ではそれも遠のき、かれこれ30年以上もご無沙汰していることに驚いています。

そのせいなのでしょうか、相方を待つ間の暇つぶしに買った、京都を特集した雑誌を読みながら、唐突にこの言葉が浮かんできたのです。

【そうだ京都、行こう】

これは、平安建都1200年記念事業として、JR東海が90年代に行ったキャンペーンで、何とも心地よく耳に響いていた記憶だけが残っていました。

当時、京都までは新幹線でほぼ1時間要していたのですが、今では40分そこそこで行けてしまいます。

時間的に考えれば、車で郊外へ出かけるより早いことになります。

旅行というより、ちょっとそこまでの感覚でしょう。

あの頃の私なら、一目散に恋しい街へ出かけていたに違いありません。

でも残念かな、今はかの街への恋しさより、そんな若さが恋しくて仕方がないのです。

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