You Must Believe In Spring

ビル・エバンス・トリオ

Bill Evans(p) / Eddie Gomez(b) / Eliot Zigmund(ds) Aug.1977

私が持っているビル・エバンスのアルバム中では【Waltz for Debby】の次に好きな一枚であると同時に、全体を通して流れる陰鬱な雰囲気から、暗いアルバムの筆頭でもあります。

まずは、のっけから【B minor waltz (for Ellaine)】という、前年に亡くなった妻エレインに捧げられた曲から始まります。

次のアルバム・タイトル曲でもある【You Must Believe In Spring】は、いつかは春がやってくることを信じる気持ちになぞらえて、自分の愛もいつかは花開くという切ない歌詞のついたスタンダード・ナンバー。

そして、リリカルな【Gary’s Theme】をはさんで、A面最後の曲が【We will meet again (for Harry)】

これは、鬱病を抱えて4ヶ月前に拳銃自殺した音楽の教師だった兄への追悼曲で、何とも淋しさの漂うメロディーが切々と流れます。

B面の最初の曲は【The Peacocks】

これは、ウエイン・ショーターも映画ラウンド ミッドナイトのサウンド・トラック盤で切ないメローディを吹いている曲ですが、このアルバムの方が数段切なく聴こえてしまいます。

続く【Sometime Ago】も、スタン・ゲッツの演奏と比べると、ゆっくりとしたテンポで、哀愁を帯びた展開が続きます。

このアルバム全体に言えるのは、エディ・ゴメスのベースが要所で光っていることなのですが、この曲でのベース・ソロは聴き応えがあり、大好きな部分です。

最後の曲は【Theme from M-A-S-H】

1970年に公開された、朝鮮戦争下の野戦病院を舞台にしたコミカルな映画のテーマ曲です。

これまでの曲に比べ、曲調は明るくなっていて、流石にこのまま終わっては。。。との思いかどうかは判りませんが、この曲のお陰で、少なからず救われた思いがするから不思議なものです。

しかし、この曲には【Suicide Is Painless:自殺は無痛】という、サブタイトルがついているし、麻薬を常習していた彼が、ヘロインからコカインへと染まり、まともな治療を受けないまま、飲酒・薬物の常用による肝硬変などが原因で、3年後の1980年に51歳で亡くなったことを考えれば、この選曲は。。。とも勘ぐりたくなってしまいます。

このアルバムに関いて著名な音楽評論家の方は

『失われたものに対する鎮魂歌のように、哀感のような深い叙情感が静かに流れているアルバムだ』

とおっしゃっているのだが、残念ながら私の貧弱な感性では、そこまで読み解くことはかないません。

情けないかな『救いのないアルバム』ぐらいしか思いつかないのです。

それでも、静かに飲みたい夜は、必ずといっていいほど、このアルバムに手が伸びてしまうので、やっぱり好きなアルバムに間違いないのでしょう。

Haru
Haru

このアルバムへのリクエストはご容赦願います。仕事になりませんので。。。

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