
デュボネとは
あまり聞きなれない銘柄【デュボネ】は、ワインにキナの樹皮やスパイスを加えて樽熟成させたとされていますが、正式なレシピは公開されていません。
キナとは、昔はマラリヤの特効薬で知られていたキニーネの原料で、日本では劇薬指定されていますので、食品には使用できません。
でも【デュボネ】は、普通に販売されていますので樹皮ならいいようです。

因みに、トニック・ウォーターの苦み成分もキニーネなのですが、日本向けのトニック・ウォーターには使われていないとのことです。
【デュボネ】の飲み口はベルモットに近い感じですが、キナ特有の香りと苦みが前面に出ていますので好みが分かれるでしょう。
原産国はフランスで、日本ではマイナーな部類に入るアイテムなので、常備しているバーは少ないと思われます。
それが、近頃やけに耳にするようになったのは、故・エリザベス女王が愛飲していたことが広まったからのようです。

女王のレシピは、レモンの風味でキナの香りが和らぎ、ジンとの相性もいいので、店ではこのスタイルで提供しています。もちろん、私が【デュボネ】を飲むときはこのスタイルです。
【デュボネ】は、食前酒として単体で飲まれることが多いようですが、ベースにしたカクテルは、辛口で、なおかつ個性的なものが多いので、好みは分かれるでしょう。
今回は、その中でも飲みやすさを考えて選んでみましたので、是非お試しください。
デュボネ・フィズ

|オレンジ・ジュース|レモン・ジュース|チェリー・ブランデー|ソーダ|
ジンをはじめとしたスピリッツ・ベースのフィズと同様に、爽やかな酸味とソーダの喉ごしで、すっきりと飲めるカクテルです。
でも、スピリッツ系のフィズと比べると、濃厚さを感じるのは【デュボネ】の影響が大きいのでしょう。
香りづけに入っているチェリー・ブランデーも、いいアクセントになっています。
エール系のビールが好きな方でしたら、抵抗なく飲めるような気もしますが、保証はできません。
因みに、ラガー・ビールが苦手な相方は『美味しい~』と言って試飲していました。

厳密に言えば【フィズ】の定義(スピリッツ・ベース)からは外れていますが、そんなことは誤差の範囲でいいでしょう。酔っ払いは寛容な心が大切なのですから。
アペタイザー

|ジン|オレンジ・ジュース|
前菜(アペタイザー)と同じ名前だけあって、食前酒として飲まれることが多いようですが、いつ飲んでも問題ない飲み口です。
デュボネとオレンジ・ジュースの組み合わせですので、フルーツ感があると言われますが、私はあまり感じません。
ジンの風味を和らげて飲みやすくした印象の方が強いです。
酸味が少ないのでそう感じるのでしょうが、ジンが苦手な方にはプラスになるでしょう。
デュボネを使ったレシピ中では、知名度が高いカクテルですので、機会があればお試しください。

食前だ食後だと決めなくても好きな時に飲めばいいと、私は決めているのですが、バーテンダーとしては失格なのかも知れません。
ザザ

|ジン|アンゴスチュラ・ビターズ|
アルコール系の素材しか使っていませんので、度数が高く大人向け(?)のカクテルとされています。
【1:1】の比率で作られることが多いようですが、私はジンを増やした【2:1】の比率で作っています。
この割合にすると、ジンの銘柄で味の変化が大きいので、通常はゴードンで作っていますが、店在庫にある銘柄でしたら変更できます。
でも、どちらにせよ個性的な飲み口には変わりありません。
【ザザ】からアンゴスチュラ・ビターズを省くと【デュボネ・カクテル】になりますが、私は下で紹介する【エリザベス女王スタイル】にしています。

通常の【デュボネ・カクテル】をご要望の方は、承りますので、お気軽にリクエストしてください。
デュボネ・カクテル|エリザベス女王スタイル

|ジン|レモン・スライス|
上で説明した【デュボネ・カクテル】の簡易版といえるでしょう。
故・エリザベス女王が、生前に好んで飲んだスタイルとして人気になり、影響から【デュボネ】の販売量も増えたと聞いています。
自分の好きなものを、グラスの中で無骨に混ぜたところや、さりげなく入れたレモン・スライスなどは、生前の人柄が現れているのでしょう。
グラスの中で作るビルドなので、気軽に作れますし、ロック・スタイルなのも気に入っています。
それ以上に、女王の愛飲するジンの銘柄が【ゴードン】なのも好印象の一因になっています。
でも、何と言っても、ここでの主役はレモン・スライスなのです。
最大限のいい仕事をしてくれていますので、確かめてください。

因みに【ネグローニ】が好きな方でしたら気に入っていただけると思います。カンパリとスイート・ベルモットを混ぜると、デュボネに似た風味になるからでしょう。
ソウル・キッス

|ドライ・ベルモット|スイート・ベルモット|オレンジ・ジュース|
ワイン系のお酒を3種類、バランスよく混ぜ合わせた、古くから飲まれているカクテルです。
ワイン・ベースの甘口カクテルに分類されていますが、ほんのりと甘い程度です。
【ソウル・キッス】には、スイート・ベルモットをライ・ウイスキー(カナディアン)に変えたレシピもあり、コチラはすっきりとした飲み口になります。
サヴォイ・カクテルブックには【No.2】として掲載されていて、通常版が【No.1] となっています。
どちらも試してみましたが、私の好みで言えば、やはり【No.2] でした。

どちらにも対応できますので、お気軽に【No.1】【No.2】とリクエストしてください。
まとめ
フランス原産の【デュボネ】の味を表すのは難しいのです。
あえて言うと『甘めの赤ワイン』が近いと思っています。
後は、キナの香りをどう感じるかで好き嫌いが決まってくるでしょう。
相性のいいジンをベースにしたレシピが目につきます。
同時に、個性的な飲み口のものが多いので、カクテル上級者向けと考えた方がいいでしょう。
でもワイン好きの方でしたら、ちょっと変わった赤ワインを飲む感覚で飲まれると、案外気に入っていただけるかも知れません。
いつもと違う個性的なカクテルを飲んでみたくなった方におすすめします。
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