ひとことで【リーズナブル】と言っても、その基準は人それぞれで変わってきます。
そこで、店在庫の中でもワンショット【600円】で提供している銘柄に絞って飲み比べてみました。
市販価格でも2.000円前後の銘柄が多いので、家飲みとしても気軽に飲める範疇ではないでしょうか?
『バーボンってどんなお酒なの?』『どれを飲めばいいのか判らない』
そんなときの参考にしていただければ嬉しいです。
私の好みと、昔飲んだイメージとの違いなどからのレビューですので、ご参考程度でお考え下さい。
おすすめの6本
人の感覚とは曖昧なものです。
このあたりのクラスでは、違いがあっても微妙な差ぐらいだろうと高を括っていました。
でも実際に飲み比べてみると、それぞれ大きな違いがあり、それが判っただけでも大発見です。
そんな中から、味、香り、口当たりなどの違いを加味したうえで、6種類のおすすめを選んでみました。
エバン・ウイリアムス
【ヘブンヒル蒸留所】
スタンダードの【黒ラベル】と迷いましたが【オールド・グランダッド】を加えましたので、コチラにしました。
この価格帯では、コストパフォーマンスがいちばん優れている1本です。
流石に【赤ラベル】の12年と比べると、香りやコクは劣りますが、飲み応えの点ではスタンダードの【黒ラベル】よりあります。
新しくなったラベルに書かれている【Bottled-in-Bond】を見ていると、無言でそれを語っているように思えてきます。
バランスは【黒ラベル】に軍配が挙がりますが、ガッツリ感を味わうのならこちらをおすすめします。
【赤】ラベルの尋常じゃない高値に比べると、ありがたい存在です。
ジョン B. ステットソン
【ヘブンヒル蒸留所】
柔らかな口当たりでおすすめな銘柄です。
比較的マイナーなので見かけることはあまり無いでしょうが、ウエスタン・ハットの代名詞的なメーカーが販売しています。
アルコールの専売メーカーではないことで、ある意味、個性的なバーボンを手掛けてくれるのでしょうか。
刺激が少なく、まろやかで上品な飲み口は価格以上のものを感じます。
骨太なバーボンを好まれる方には、物足りなく感じてしまうでしょうが、時にはこんな優しいバーボンで、ホッとするのもいいものです。
味もそうですが、手にするとホッコリとしてしまうのは、ボトルの形かも知れません。
Mar.2023追記:残念ながら価格が高騰してしまい、価格に見合わなくなってしまいましたので、店在庫限りで終了します。
オールド・グランダッド
【ジムビーム蒸留所】
古くから根強いファンがいる銘柄で、私もその一人です。
現在はジム・ビームの傘下に入っていますが、昔ながらの製法は変わっていないとのことです。
特徴でもある、強めの樽香と仄かな果実系の香りを感じる点が変わっていないので、信用できるでしょう。
そのあたりも、長年に渡り、根強くファンを引き付けている証と言えます。
樽香を強く感じる中に、ほんのりとした果実香もある、数少ない銘柄です。
100円硬貨を1枚足した【ボンデッド】も、是非お試しください。
デビルズ・カット(ジム・ビーム)
【ジムビーム蒸留所】
バーボンの販売量世界1位を誇るジム・ビームの中で、スタンダードのひとつ上位のクラスです。
同クラスには他に【ダブル・オーク】【ブラック・ラベル】がありますが、おすすめはこの【デビルズ・カット】です。
樽にしみ込んだ成分(デビルズ・カット)を、特殊製法で抽出したのち、混ぜ合わせた製品です。
【ダブル・オーク】ほど主張せず【ブラック・ラベル】のように複雑過ぎないバランスの良さがポイントです。
価格が一番リーズナブルなのも嬉しいところです。
正直、ソーダで割るしか飲み方を思いつかないスタンダードより、断然おすすめします。
エズラ・ブルックス
【ラックス・ロウ蒸留所】
この飲み比べで一番大きな収穫だったのが【エズラ・ブルックス】を再認識できたことです。
【オールド・エズラ】を思わせる豊かな風味と、マイルドな口当たりのバランスが絶妙なうえ、後口に残るほろ苦さが癖になりそうです。
絶妙とも言える90プルーフのアルコール度数のお陰で【ニート】でも難なく飲めてしまいます。
トータルなバランスで選ぶなら【エズラ・ブルックス】以外の選択肢が無くなってしまいました。
ゆっくりと【ニート】で飲むのがお勧めです。
ごめんなさい【エズラ・ブルックス】正直言って、これまで侮っていました。
レベル・イエール
【ラックス・ロウ蒸留所】
初めてバーボンを飲まれる方におすすめしている1本です。
小麦系のまろやかな口当たりと、長く続く甘い後味が、飲みなれていない方に打ってつけだと思っています。
そんな【レバル・イエール】ですが、2000年初頭は、ボトルがズングリとしていて、もっとコクが感じられた味でした。
それが、今よりも細長いボトルだった時期を経ながら、より軽い方向へシフトされてた模様です。
軽くなったとは言え、後味の甘さが長く続く特徴は健在ですので、そこは安心しています。
誰が飲んでも甘さを感じられるバーボンは少ないので、貴重な銘柄には違いありません。
微妙な4本
ここからの4種類は、条件付きでおすすめできるものや、飲まれるのなら別のクラスをおすすめしたい銘柄を集めました。
ケンタッキー・ジェントルマン
【バートン蒸留所】
今回試飲した中では、一番個性を感じられる銘柄です。
ドライな飲み口の特徴でもあるセメダイン香が長く続くので好みが分かれるところです。
舌を刺激するような感覚は、同蒸留所の【リッチモンド・リザーブ(現・1792)】とは真逆な飲み口です。
ニートやロックで飲むより、ソーダで割ると飲みやすくなると思いますが。。。
飲み手を選ぶ銘柄ですので、興味のある方だけお試しください。
個性と言ってしまえばそうなのでしょうが、インパクトはかなり感じます。
ジョニー・ドラム
【ウィレット蒸留所】
【ノアーズ・ミル】を始めとして、私好みのバーボンを作ってくれる蒸留所ですので、現在6種類の店在庫があります。
でも、この【ジョニー・ドラム】に関して言えば【同・プライベート・ストック】との差が大きすぎて、おすすめするまでには至っていません。
価格的にも開きがありますので、比較するのは間違っているかも知れませんが、同じ名前を冠した銘柄としては考えてしまいます。
価格に倍近くの開きはありますが【ジョニー・ドラム】を飲むのでしたら【プライベート・ストック】の方をおすすめします。
飲み比べるたびに共通点を探すのですが、いまだに見つかっていません。
フォア・ローゼス
【フォアローゼス蒸留所】
ライトで癖が無く飲みやすいので、バーボンの中では、比較的お目にかかることが多い銘柄でしょう。
滑らかで柔らかい飲み口は、悪く言えば、可もなく不可もなくという事になります。
あまりにも凡庸すぎるので、初めて飲まれる方におすすめするのさえ躊躇ってしまいます。
【フォア・ローゼス】自体は均整の取れた美味しいバーボンなので、飲まれるのでしたら上位クラスの【ブラック・ラベル】をおすすめします。
何故か人気のない【ブラック・ラベル】ですが、飲み方を選ばないしっかりとした飲み口は秀逸です。
ヘンリー・マッケンナ
【フォアローゼス蒸留所】【ヘブンヒル蒸留所】
『ラベルが変わると中身も変わる』と言われますが、まさしくそれを証明するのが【ヘンリー・マッケンナ】です。
『幻のバーボン』と呼ばれ入手が困難だった頃は、透明感と厚みが共存する飲みごたえのある味でした。
それが、透明なボトルに変わり、何処でも入手できるようになった時には、厚みが消えてサラリと飲めるバーボンに変わっていました。
更に現行のボトルになり、よりいっそう拍車がかかってしまったようです。
アメリカ国内向けが【ヘブンヒル蒸留所】日本向けが【フォア・ローゼス蒸留所】とのことなので、頷けるところでもあります。
ウイスキー自体を始めて飲まれる方以外には、おすすめしていません。
残念な3本
これからの3本は、バーボンを飲みはじめた頃に飲んだ銘柄ばかりで、その頃の記憶が色濃く残っています。
まだまだ初心者だったせいか、バーボンから受けたインパクトが大きかったので、記憶に刻まれてしまったのでしょう。
ですから、ここからのレビューは、飲み口というより、単なる私のノスタルジーとしてお読みください。
アーリー・タイムス
私が初めて飲んだバーボンが【アーリー・タイムス】でした。
トウモロコシを連想させるような黄色い丸ボトルで、ラベルの文字にもアメリカ感が満載でした。
国産の安いウイスキーばかり飲んでいた舌には、限りなく刺激的で、バーボンに嵌るきっかけになった記念すべき銘柄です。
だからこそ、丸瓶から角瓶に変わったことよりも、中身の変化に付いて行けず飲まなくなっていました。
淡い期待を込めながら、アメリカ流通のリッター・ボトルを仕入れてみましたが、残念ながら、あの時の感覚が蘇ることはありませんでした。
やはり、振り返ることはできても、戻ることはできないのが、過去なのでしょう。
現在【アーリータイムス】は取り扱っていません。
オールド・クロウ
『昔のクロウは旨かった』古いバーボン仲間は、押しなべてそう言います。
確かに、昔の【オールド・クロウ】は個性的で、ラベルのカラスも真っ黒でした。
ひとことで表すと【粗野で荒っぽい】がピッタリとくる、骨太なバーボンだったのです。
現在はジム・ビームの傘下で作られているとのことで、真っ黒だったカラスもグレーになってしまいました。
同時に味の方も、ジム・ビームと飲み比べても違いが判らなかった程に変わっています。
今となっては、せめて外見だけでもと思いから、リッター・ボトルを探して眺めるだけにしています。
エンシェント・エイジ
”古き良き時代” と訳される【エンシェント・エイジ】です。
現在は【バッファロートレース蒸留所】の製品ですが、ここは傘下に収めた銘柄を忠実に引き継ぎながら作ってくれるので安心できます。
でも【エンシェント・エイジ】も、丸瓶から角瓶に変わった時点で変化していますので、時すでに遅しでした。
多くのメーカーが丸瓶から角瓶へ変わってた時期がありましたが、その理由を知る由はありません。
ただ【オールド・クロウ】と同様に【エンシェント・エイジ】もリッター・ボトルを眺めるだけのアイテムになっています。
とは言え、無性に飲みたくなるときがあるのは ”古き良き時代” へのノスタルジーなのでしょう。
まとめ
【アメリカン・ウイスキー】を中心に店を始めたのは、【バーボン】が好きだったこともありますが、リーズナブルな価格で提供できることも大きな理由になっています。
開店当初は、昨今のウイスキー・ブームなどは想像すらできない状態で、ましてや【バーボン】はマイナーの極みのようなジャンルでした。
それでも、根っからのバーボン好きな方々の支えもあり、現在に至っています。
今回の飲み比べでは、量販店で買えば1.000札にちょっとプラスしたクラスでも、それぞれの個性を楽しめる【バーボン】の魅力を発見できました。
無骨で粗野なイメージがある【バーボン】は、男性的と思われています。
でも、女性が【バーボン】を飲まれる姿を目にしたときは、とても魅力的に感じてしまうのです。
是非とも、これを機会に女性の方も【バーボン】を飲まれては如何でしょう?
そして、店に入ってくるなり
『マスター!ターキー、ソーダでっ!』
と言ってくださる、素敵な女性がご来店くださることを夢見ながら、本日も開店!
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